改正会社法解説セミナー

平成17年4月27日、梅田泰宏が講師となり、18年4月から施行が予定されている会社法について
解説をしました。

改正年金制度解説セミナー

平成16年6月23日、松島寛が講師となり改正年金制度について解説しました。

当日のレジュメは、こちらをご覧ください。→レジュメ

 

平成16年度税制改正ポイント解説

 平成16年税制改正に関して、特に身近で影響する改正点を解説します。

 1.住宅土地税制

  住宅ローン控除の見直し

 住宅ローン控除の概要

  住宅ローン控除制度は、10年以上の住宅ローンを借りて自宅(一戸建でもマンションでも問いません)を購入または建築した場合や、リフォーム等をした場合に、年間所得が3,000万円以下の個人が、その年末のローン残高に所定の率を乗じた金額を、各年の所得税額から控除できるという制度です。

 見直しの概要

   今回の改正により、住宅を居住開始した日が平成161231日までである場合は、現行の制度及び規模を維持した上で、平成17年から段階的に規模が縮小されることとなりました。

 改正前

 平成15年中に居住開始した場合には、控除期間が10年で、平成15年以降各年の1231日末における住宅ローン残高5,000万円以下の部分について、控除率を一律1%として、10年間合計で最高500万円の税額控除が受けられました。

 改正後

 居住開始年が平成17年以降になりますと、最高額と控除率が圧縮されるようになります。したがって、自宅の購入・建築・リフォームなどを計画されている方は、今年中にやってしまう方が有利ということになります。

居住開始年

控除期間

ローン年末残高

控除年・控除率

控除合計額

平成16

10

5,000万円以下

1〜10   1%

500万円

17

4,000万円以下

1〜8    1%

910   0.5

360万円

18

3,000万円以下

1〜7    1%

8〜10  0.5

255万円

19

2,500万円以下

1〜6    1%

7〜10  0.5

200万円

20

2,000万円以下

      

160万円

      不動産譲渡損益の損益通算の規制

 土地建物等を譲渡した場合に発生する譲渡損益については、従来、他の所得例えば給与所得、不動産所得、事情所得などと通算して合計所得を計算し納税額を算出していました。今回の改正により、原則として他の所得との通算と翌年度以降への損失の繰越が出来なくなりました。

  この規制は、今回の税制改正の中でも大きな改正点であり、また、影響度の大きいものだといえます。

   昨今の不動産価格は、一部地域を除いて依然として低迷が続いています。このような状況の中で、不動産を処分する際には、損失が発生するケースが多いと思われます。従来は、損失が発生する場合には他の所得と通算することにより申告納税額を圧縮することが出来ました。むしろ、他の所得が大きくなった場合に、不動産売却により損失を発生させて節税をするという形で利用することができたのです。今後は、この方法が利用できなくなったということになります。ただし、同一年度において複数の不動産を譲渡した場合には、それらの譲渡損益内での通算は可能です。

 適用時期

   平成1611日以降に行う不動産の譲渡から適用になります。

なお、平成15年分の所得税申告までに、旧法により既に適用がされている不動産譲渡損失の繰越控除については、従来どおりの扱いとなり、最長3年間の繰越控除が引き続き認められています。

      特定の居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除要件緩和

 所有期間5年超のマイホームを売却して損失が発生している場合で、新たにローン付で再度マイホームを買い換えた場合には、3年間に限りその譲渡損失額を翌年以降に繰り越すことが出来ます。従来は、譲渡契約の契約日の前日において、或いはツナギ融資等により先に買い換え物件を購入する場合には、譲渡契約締結の日の6ヶ月前の月の最初の日において、売却物件のローン未決済残高を有していなくてはならないという要件がありました。

今回の改正により、この要件がはずされました。

したがって、今後はローン完済物件の譲渡損失についても、買い換えをするという条件付で譲渡損失の3年間の繰越控除の適用が認められるようになりました。

   また、この制度は、時限立法となっていますが、平成181231日まで延長されています。

 ■ 特定の居住用財産の譲渡損失の繰越控除等の創設

 前項の買い換え付のマイホーム譲渡損失の3年間繰越控除特例とは別に、今回の改正で、買い換えなしマイホーム譲渡損失の3年間繰越控除特例が創設されました。ただし、こちらは売却したマイホームについてローン未決済残高があることが条件となります。

  平成161月1日から平成181231日までの間に、その年の1月1日において所有期間が5年を超える住宅ローンの未決済残高があるマイホームを譲渡した場合において、譲渡損失が発生した場合には、一定の要件のもとで買い換えを伴わなくても、その譲渡損失についてその俊の翌年以後3年以内の各年分の総所得金額から繰越控除が認められます。

  住宅ローンの支払いが苦しくなり、売却したのはいいけれど、買い換えができないというケースも最近は目立つようになってきました。このようなケースに損失が発生した場合の税金上の措置が講じられたということができます。

   ただし、注意しなくてはならないのは、損失そのものが繰越控除の対象となるのではなく、

ローン未決済残高から売却価格を控除した金額が限度とされています。したがって、売却価格が購入時の価格を下回って損失が発生していても、売却価格自体がローン未決済残高以上であれば、この特例は利用できません。

説例

取得価格              5,000万円

売却価格              3,000万円 (売却時の減価償却後の金額4,400万円)

売却時のローン残高    3,500万円

譲渡経費                100万円

売却年の給与所得        700万円

譲渡所得の計算

  3,000万円 4,400万円+100万円)= 1,500万円

売却年の所得計算

  700万円 1,500万円 800万円  ・・・  所得ゼロ

繰り越せる損失額

  3,500万円 3,000万円 500万円

  500万円    800万円                           500万円

 ■ 不動産譲渡所得の税率引き下げと特別控除の削減

(1)長期譲渡所得(所有期間が5年超のもの)

平成16年1月1日以後に行う所有期間が5年超の不動産の譲渡に係る譲渡分離所得の税率が、従来の26%(所得税20%、住民税6%)から、20%(所得税15%、住民税5%)に引き下げになりました。

   また、長期譲渡所得を計算する際の100万円の特別控除制度が廃止になりました。

 (2)短期譲渡所得(所有期間が5年以下のもの)

 平成16年1月1日以後に行う所有期間が5年以下の不動産の譲渡については、下記のように税率が適用になります。

     

     

・一般の譲渡

次のいずれか多い税額

@     譲渡益の52%(所得税40%、住民税12%)相当額

A     全額総合課税をしたとした場合の上積税額の110%相当額

・国等に対する譲渡

次のいずれか多い税額

@     譲渡益の26%(所得税20%、住民税6%)相当額

A     全額総合課税したとした場合の上積税額

 

・一般の譲渡

譲渡益の39%(所得税30%、住民税9%)相当額

 

 

 

・国等に対する譲渡

譲渡益の20%(所得税15%、住民税5%)相当額

 2.年金税制

 ■ 公的年金等控除・老年者控除の見直し

 (1)   公的年金等控除の圧縮

 従来、公的年金を貰っている65歳以上の人に対しては公的年金等の金額から最低140万円の控除をしたうえで、所得計算をしていましたが、今回の改正により65歳未満の人と同様の70万円に引き下げられました。ただ、逆に老年者特別加算ということで50万円が別途控除額に加算されることになりました。この結果、65歳以上の人の公的年金等控除額は120万円ということになります。

 (2)   老年者控除の廃止

 従来、65歳以上の人で合計所得金額が1,000万円以下の人には、老年者控除として50万円の所得控除が認められていましたが、これが廃止となります。

適用開始は、平成17年分以後の所得からになります。

3.金融・証券税制

 ■ 非上場株式等の譲渡所得等に係る税率の改正

上場会社等以外の会社のいわゆる未公開会社の株式等を譲渡した場合の譲渡所得の計算に適用される税率が、26%(所得税20%、住民税6%)から、20%(所得税15%、住民税5%)に引き下げられました。

平成161月1日以後に譲渡された株式等から適用されます。

■ 公募株式投資信託の受益証券の譲渡に係る税率の改正

 (1)   税率は10%(所得税7%、住民税3%)が適用される

  公募株式投資信託の受益証券の譲渡した場合には、上場株式等と同様の税率が適用されるようになりました。
 
昨年度の税制改正で、株式投信の分配金や解約時の差益については、平成20331日までは10%(所得税7%、住民税3%)による源泉徴収で事実上課税関係は完了することになっていました(確定申告でも可)。ところが、譲渡時には26%の分離課税方式が依然と残ってしまったため、上場株式等を譲渡した場合の優遇税率に合わせることとなりました。

 
平成16年1月1日以後に行われた受益証券の譲渡されたから適用されます。

(2)   特定口座制度の拡充及び整備

 
公募株式投信の受益証券が、上場株式等と同等に扱われることとなったため、特定口座内保管上場株式等の範囲に、公募株式投信の受益証券が加えられました。
 
 
平成164月1日以後の特定口座内保管上場株式等の譲渡について適用されます。

(3)   公募株式投資信託の受益証券の譲渡損失の特例

 
従来、譲渡により生じた損失は、同一年の他の株式等の譲渡益と通算してもなお損失の残額がある場合には、打ち切られてしまっていましたが、今年度の改正により、上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除の対象とされ翌年以後最長3年間に亘り繰り越した上で株式等の譲渡益と通算することができるようになりました。

 
平成161月1日以後に行われた受益証券の譲渡されたから適用されます。

(4)   証券業者等が買い取った受益証券の解約時の源泉徴収の免除

 
証券業者などが、投資家からの買取請求により買い取った公募株式投資信託の受益証券について、買い取った日又は同日の翌営業日に行った解約に基づき支払を受ける収益の分配については、一定の要件のもとで源泉徴収を行わなくてもよいこととされました。

 
平成1641日以後に買い取った公募株式投資信託の一部の解約について適用されます。

 ■ 工ンジェル税制の拡充

  創業期の中小企業に対して投資を行った場合及び譲渡等により利益・損失が発生した場合のいずれの場合でも課税の特例が受けられます。

対象となる特定中小会社の要件

創業期(設立10年以内)の中小企業者であること

試験研究費等の売上高に占める割合が3%超であること(設立5年超10年以内の企業にあっては5%超)

外部からの投資を投資時点で16以上取り入れている会社であること

大規模会社の子会社でないこと

未登録・未上場の株式会社であること 等

 上記に加えて今回の改正では下記のような会社が追加されました。

投資事業組合契約に従って投資事業有限責任組合を通じて投資される会社

証券業協会がその定める規則に従って指定をした銘柄(グリーンシート・エマージング区分)の株式を発行する会社

 税額の計算上の特例

 個人投資家が当該株式について投資した場合及び譲渡等をすることによって利益・損失が発生した場合のいずれの場合でも、課税の特例が受けられます。

 投資段階

 平成1541日以降取得する特定中小会社株式について、同一年分の株式譲渡益を限度として、所得税の譲渡所得の計算上、株式譲渡益額から特定中小会社に対する投資額を控除(ただし、特定中小会社株式の取得費から当該控除額は減額)できます。

 譲渡段階の条件緩和

 従来は、「上場等の日」において3年以前から保有していることが条件でしたが、今回の改正で、「譲渡の日」以前3年間保有しているという条件に緩和されました。したがって、上場等ばかりではなく、上場等の日以前に合併や買収によって譲渡した場合において譲渡所得が発生する場合にも、適用できるようになりました。

 
平成164月1日以後に行う譲渡について適用されます。

4.事業承継関係税制

 ■ 特定同族会社株式の評価減特例の改正

未公開である中小企業の株式について、相続税評価額を10%減額する特例措置の対象となる株式等の上限が3億円から10億円に引き上げられました。

 (1)   制度の概要

 
この特例は、被相続人の親族が相続によって取得した未公開の中小企業の株式等について、一定の要件のもとで発行済み株式総数の23までを対象に相続税評価額ベースで10億円を限度して、相続税の課税価格の10%相当額(最高1億円)を減額できるというものです。
 
従来は、株式等の評価額の上限が3億円、課税価格の減額は3,000万円が限度でした。

 (2)   主な適用要件

この特例を受けるための要件は下記のようになっています。

@ その発行法人の発行済み株式の評価額総額が20億円未満であること
A 被相続人及びその同族関係者が、その法人の発行済み株式総数の50%超を保
    
有していること
B 被相続人からの相続により株式を取得した相続人が、被相続人の親族であり、
    
かつ相続税の申告期限においてその会社の役員等の地位にあること
C
原則として、特例の適用を受ける株式等の全てを、相続申告期限まで保有していること

(3)   小規模宅地特例との併用

 
この特定同族会社株式の評価減の特例は、相続した居住用・事業用宅地等の一定面積(最大400u)につき評価減を認めた「小規模宅地の評価減特例」と選択制とされており、重複適用は出来ません。
 
ただし、相続した小規模宅地の特例適用面積が限度面積に満たない場合あるいは、この制度が限度一杯に利用できていない場合には、その余っている部分を他方の相続財産の減額特例に使うことができます。

 
■ 相続した株式を発行会社に売却した場合のみなし配当課税の不適用措置の創設

  未公開会社の株式等を相続した場合に、発行会社にその株式を買い取ってもらうということがあります。その発行会社にとっては自社株を買い取るということになり、自社株に含み益がある場合には、その部分は株主への利益の払い戻しということになり、あたかも配当が実施されたと同じ効果があるとされています。しかし、簡単には換金できない未公開会社の株式等を、相続するという特殊な条件のもとで、配当課税をすると配当所得は総合所得とされる関係で最高50%の税率で所得税がかかることになってしまうことになります。そこで、今回の措置が創設されました。

相続又は遺贈により財産を取得した個人でその相続又は遺贈につき相続税が発生する場合、その相続開始があった日の翌日からその相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までの間にその相続税額に係る課税価格の計算に算入された未公開株式を発行会社に売却したものが対象

その未公開会社株式の譲渡対価の金額が、発行会社の「資本金+資本積立金」(資本等の金額)のうちその株式に対応する部分の金額を超えるときには、その超える部分の金額については、みなし配当課税を行わない。

上記の適用を受ける金額について、株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額とみなして上と所得計算をする。

すなわち、通常の株式の20%分離課税による譲渡所得計算のみで課税関係を終了するということになります。

平成164月1日以後の相続等により取得した未公開株式等を同日以後に譲渡する場合に適用されます。